学究:高嶋米峰(39)関連史料[38]

前回同様、朝日新聞掲載分から確認していきたいと思います。

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54.1924年(大正13年) 8月 3日 「學藝 旅・読書 自然を征服 高島米峰

一部引用↓

「♢境遇が許さないので、まだ、探勝旅行風流旅行の經驗は、持合せて居ないがただ時々、講演に招かれて、地方に出かけることがある位。一昨年、岡山縣の夏期大學に招かれた時、高梁町の臨時講演で、九十八度といふ暑熱の中に立ち、三時間半といふ長講を一席に辯じ上げ、袴の裾から雫が垂れる程汗をかき、體中の水分が、悉く出發したやうな感じをしたことがあるが、それでも、人と自然とを、立派に征服し得たやうな、誇りと快さとを、満喫せずには居られなかつた。
 ♢夏の讀書は、組織的なものよりは、斷片的で、しかも含蓄の多いものを、選ぶべきである。理由は略するが、まづ、『論語』『碧巌録』『嘆異鈔』など。」

⇒高嶋米峰が自身の旅・夏の読書について語った記事。

 米峰は、これまでに探勝(名勝の地を見に行くこと)旅行や風流旅行をした経験はなく、講演に招かれた際に地方に出向くことが、旅行に近い経験であると語る。数多くの講演をこなしてきた高嶋米峰らしい経験談であると言える。

 今回の記事では、岡山県の夏期大学で三時間半の講演に挑んだときの、汗が滴る暑さとそれを通して感じた達成感がいきいきと語られている。高嶋米峰の講演後の心境を伝える貴重な発言である(⇒「人と自然とを、立派に征服し得たやうな、誇りと快さとを、満喫せずには居られなかつた」)。

 次に「夏の読書」についてであるが、高嶋米峰は組織的な(⇒理論的な)書物よりも、断片的で含蓄のある書物を薦めている。これは高嶋が「理論的な書物」を読むことを好まなかったというよりも、「夏」という季節において向き合う書物としては適さないと判断したと思われる。例としてあげた書物には、『論語』『碧巌録』(へきがんろく)『歎異抄』があった。

 

*『論語』関連書籍:論語 (岩波文庫 青202-1)

          現代語訳 論語と算盤 (ちくま新書)

 『碧巌録』関連書籍:『碧巌録』を読む (岩波現代文庫)

           碧巌録〈上〉 (岩波文庫)

           碧巌録 (中) (岩波文庫)

           碧巌録 (下) (岩波文庫)

 『歎異抄』関連書籍:歎異抄 (岩波文庫 青318-2)