学究:高嶋米峰(30)関連史料[29]

前回同様、朝日新聞掲載分から確認していきたいと思います。

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41.1921年(大正10年) 5月 8日 「學藝たより」

「○男女問題演説會 八日午後六時半より神田青年會館に開き「新マルサス主義より拒婚同盟へ」高島米峰氏「戀愛の倫理」文學博士吉田静到氏「廓清の本義」理學博士山内繁雄氏「政治と風俗」島田三郎氏」

⇒「男女問題演説會」の内容を示した記事。

 高嶋米峰の講演内容に注目。まず「新マルサス主義」であるが、最初に「マルサス主義」とは何かを確認する。「マルサス主義」とは、マルサスが提唱した人口と食糧の関係に関する学説。「人間が生きていくためには食料が必要であること」を前提として、人口は幾何級数的に増えるが、食糧は算術級数的にしか増えないことから、この結果起こる貧困・害悪への対策として、結婚年齢の延期&結婚後の産児制限を否定するという道徳的抑制を推奨した。

 次に「新マルサス主義」は、1820年代に英国のF=プレースが提唱。マルサス主義に立脚しつつ、人口増加による貧困・害悪への対策として、道徳的抑制によらず、結婚後の産児制限を主張する思想。高嶋米峰はこの「新マルサス主義」を参照して、人口増加はそもそも男女の関係性(婚姻)から端を発していると捉え、「拒婚同盟」という案を提示したと考えられる。

 吉田静致(史料中では吉田静到)は、明治から昭和前期に活躍した倫理学者。1928年(昭和3年)に倫理学会初代会長に就任し、日本の倫理学の発展に寄与した。

 山内繁雄は、明治から昭和期の生物学者東京高等師範学校やシカゴ大学で教授を務めた。

 

マルサス主義、新マルサス主義関連書籍:人口論 (光文社古典新訳文庫)

                    マルサス人口論争と「改革の時代」 (現代経済政策シリーズ)

                    人口学への招待―少子・高齢化はどこまで解明されたか (中公新書)

                    マルサス人口論の国際的展開―19世紀近代国家への波及