学究:高嶋米峰(24)関連史料[23]

前回同様、朝日新聞掲載分から確認していきたいと思います。

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35.1920年(大正9年) 8月 16日 「鉄箒 調査事項に就いて 高島米峰氏の「去勢調査」に對する國勢調査局の辯明」

全文引用↓

「♢國勢調査事項中に、國民の宗教、教育の程度を示すべき項目を新に追加して貰ひたい、といふことでありますが、若し國民生活の各方面の現状が、その儘些の錯誤なしに直寫し得る方法があつたら、最も理想的な國勢調査がなし遂げらるゝ譯でありますけれども、却々さう都合好くは行きかねるのです、國民文化の程度を成るべく手軽な方法に依りて知ることが出來たならば勿論結構なことに違ひありません。
 ♢併しながら、種々研究を經たる結果、調査事項は、氏名、男女別、生年月日、職業、職業上の地位、民籍別………等の八項目に決められたのは、元來調査事項は、國民生活の現状を測知すべき骨子たるべきものであつて、成るたけ簡單明瞭で、何人にも容易に――比較的――そして適確に答へ得るもので無ければならぬ」といふ趣旨に基いたものです。
 ♢假りに宗教教育等に就て、附帯調査を實施するとしても、申告用紙だけでも千二百萬枚から印刷しなければならぬのですから、現在の印刷局の能力から云つても、今から準備をすることは一寸困難な仕事にもなります、併しながら近來各方面から、國勢調査に就て熱心な意見を申出でられる向に對しては當局者として相當考慮を拂ふことを惜しむものではありません。」(一記者)」

⇒この史料は、高嶋米峰の国勢調査局に対する要求「國勢調査事項中に、國民の宗教、教育の程度を示すべき項目を新に追加して貰ひたい」について、国勢調査局が返答したという中身になっている。

 国勢調査局は、高嶋米峰案を仮に国勢調査項目に加えたとしても、国民文化の全体像を把握することには繫がらないと述べる。また、質問内容を「氏名、男女別、生年月日、職業、職業上の地位、民籍別」など簡単に答えられるものにすることも重要であるとし、あとは附帯調査の實施において発生する費用についても、経済的な問題で高嶋米峰案の困難が主張されている。

 

国勢調査局関連書籍:国勢調査 日本社会の百年 (岩波現代全書)

           国勢調査と日本近代 (一橋大学経済研究叢書 (51))

           東アジアの社会大変動―人口センサスが語る世界―