学究:高嶋米峰(23)関連史料[22]

前回同様、朝日新聞掲載分から確認していきたいと思います。

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34.1920年(大正9年) 2月 13日 「職業制限撤廢を叫ぶ 僧徒の參政要求 普選は大勢なり被選の權利に差別あらんや 気勢揚る明治會館の大會」

全文引用↓

 「普選の提唱と共に不當不合理な被選擧權の職業制限撤廢を期する佛敎各宗有志並に有力佛敎徒等の參政權差別撤廢期成同盟會は十二日夜六時神田明治會館に大會を催した、參會約八百名、楠原龍誓氏開會の辭を述べ座長に岡本貫玉氏を推し直に宣言
 決議の朗讀あり、富山縣代表河合大爾外數氏の祝辭朗讀後實行委員に
 岡本貫玉、中西雄洞、木山十彰、田崎達雄、岩野眞雄
 諸氏を擧げ座長の發聲で萬歳を三唱し續いて演説會に入つた、高島米峰(徹底的普選)中野實○(普選の眞義)渡邊海旭(文化思想の根柢)安藤正純(特權階級と特殊階級)田中舎身(普選案の歴史と現状)諸氏各熱辯を揮つて被選擧權職業制限の不合理を叫び滿場割れんばかりの
 喝采裡に 十時半閉會した、尚實行委員諸氏は本日部署を定めて各政黨首領を訪問して主旨の貫徹に盡すといふ
 △決議 
一、吾曹は佛教の本旨に基き國運の隆盛に資し社會の慶福を増益せんが爲に此處に普選の實現を期す 
一、吾曹は立憲の本義及び普選の公理に依り選擧法第十三條の撤廢を期す」

 ⇒34の史料は、先程の33の後半部分にある「十二日午後六時より神田の明治會館」で開かれた会合に関して述べたもの。この大会は、梅原龍誓の開会の辞により始まり、岡本貫玉を座長として、宣言・決議・演説が進められた。(岡本貫玉については、岡本貫玉 - 新纂浄土宗大辞典を参照。)

 実行委員のメンバーには、社会福祉施設の設立や雑誌『労働共済』の運営に携わった中西雄洞や寄宿舎「至心学寮」設立で知られる木山十彰、大東出版社を立ち上げた岩野眞雄らの名が並ぶ。

 演説内容を見ると、「高島米峰(徹底的普選)」「田中舎身(普選案の歴史と現状)」と、「普選」が強く意識されていることが分かる。仏教界が「普選」に強い関心を持っているのは、僧侶に対する「職業的差別」「参政権差別」の撤廃に繫がるためである。つまり仏教界は、僧侶に被選挙権が認められていないという状況をきっかけとして、「普選運動」という一種の社会運動にコミットしていくことになる。(僧侶に初めから被選挙権が認められていれば、仏教界の普選運動(社会運動)に対する関わり方は違った者になっていたかもしれない。

 決議された内容を纏めると、次のようになる。

「一、仏教界が国家と社会の幸福のために尽くす上で、普通選挙を要求する。」

「一、「立憲の本義及び普選の公理」を前提に、選挙法第13条の撤廃を要求する。」

 

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