学究:徳富蘇峰(21)関連史料[20]

前回同様、朝日新聞掲載分から確認していきたいと思います。

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42.1903年(明治36年) 8月 24日 「●文壇週報 文壇子」

一部引用↓

「◉此ごろ新聞紙に見にたる出版書廣告に萬朝報世界萬國欄記者斯波貞吉著と云ふがあるが萬朝報世界萬國欄記者とは何のコツタ、何のコツタ、時候のせいか、弓町邊から此ごろなんだか眞面目にお交際の出來にくい様な人間を續々出すが、近所迷惑だ◉二號字は仰山を意味す。仰山論を書いて有ゆる天下の新聞雜誌を罵れるは徳富蘇峯なり、而して徳富蘇峯の國民新聞ほど二號字多き新聞紙は日本になし、西洋は知らず」

⇒一つ目の◉では、出版書広告欄に見られた「萬朝報世界萬國欄記者」という言葉の意味不明さが指摘される。また「弓町邊」というのは、 東京都文京区本郷の地名であり、そこには「東京帝国大学」が位置しているため、史料中の「斯波貞吉」(東京帝国大学選科卒業、「萬朝報」ジャーナリスト、仏教大学(現・龍谷大学)教授)も含めて、「東京帝国大学卒業生に交際しにくい者が増えた」と記事執筆者は述べていることが分かる。

 二つ目の◉では、前回分のブログ(学究:徳富蘇峰(20)関連史料[19] - 学究ブログ(思想好きのぬたば))で紹介した徳富蘇峰の「仰山」論が取り上げられている(「二號字」とは何か、ということについても上記の前回分ブログをチェック)。ここでは、「一番大袈裟な記事を掲載し続けているのは、「仰山」論を唱える蘇峰本人が出版する「国民新聞」ではないのか」と批判がなされ、しかもその大袈裟ぶりは「西洋にも存在しない」とされている。鮮やかな批判である。

 

斯波貞吉関連書籍:国家的社会論

 黒岩涙香関連書籍:日本ミステリー小説史 - 黒岩涙香から松本清張へ (中公新書)

 帝国大学関連書籍:帝国大学 近代日本のエリート育成装置 (中公新書)

 

43.1904年(明治37年) 1月 8日 「●霞の糸」

一部引用↓

「◉逮捕 深川區西大工町一番地掬摸○分○甲勝事渡邊勝次郎は舊○○○の掬摸 渡邊清太郎が掬取りたる徳富蘇峰氏の鐡○懐中時計(五十圓)を纔か八十錢に買取りたる事露顕し此程警視廰の手に捕はれ昨日検事局へ送られたり」

 ⇒徳富蘇峰が掏摸(すり)にあい懐中時計を盗まれる、という史料。犯人の名前は「渡邊清太郎」である。

 

*掏摸関連書籍:掏摸(スリ) (河出文庫)