学究:高嶋米峰(3)関連史料[2]

前回同様、朝日新聞掲載分から確認していきたいと思います。

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4.1912年(明治45年) 6月 30日 「●ルソー記念會」

全文引用↓

「▽危機一髪的演説 十八世紀の初頭瑞西ジエ子バ湖畔に生れ「エミール」「民約論」等を著はし佛國大革命の精神的點火者と成りたるジヤン、ジヤクルソーの誕生二百年記念會は二十八日午後五時より神田淡路町なる多賀羅亭に於て開催せられたるが來會者は三宅雪嶺博士、福本日南氏、内田魯庵氏を始め文壇知名の士約四十名主催者堺利彦氏の簡単なる挨拶ありて食堂を開きたるが席上伊藤痴遊氏の自由黨時代懐舊談あり大阪事件の女傑として名ある福田英子女史も雪嶺、日南の諸氏と共にビールの杯を擧げて往時を談ずるなど珍らしく感興深き會合なりき晩餐後青年會館に於て記念講演會を開きたるが高島米峰氏開會の辞を述べて本會は所謂危險思想を宣傳助長する者にあらずとて婉曲なる言句を以て一流の危機一髪的演説を成すや血氣の聴衆はもどかしがり床を蹴り拍手を成して「大膽にやれ」「遠慮するな」等の怒聲堂を遙かし生田長江、福本日南、三宅雪嶺の諸氏も亦激越なる思想を藏すに皮肉なる文句を以てし最後に警視廰の所謂危險人物なる堺利彦氏は「ルソーと現代」なる題下に得意の札付演説を成して青年の血を沸かしめ十一時過ぎ無事散會したり」

⇒東京において行われたルソー生誕二百年記念会の様子を伝えた記事。主催者の堺利彦に加えて、三宅雪嶺、福本日南、内田魯庵ら、文壇人・知識人の名前が散見される。また「東洋のジャンル・ダルク」と呼ばれた福田英子が、雪嶺らとビールを飲む姿は印象的である。

 会を円滑に進めるために、開会の辞を述べた米峰であったが、それに反して参加者にはむしろ危険思想の発露を望む姿が見られる。

三宅雪嶺関連書籍:評伝 三宅雪嶺の思想像 (和泉選書)

 伊藤痴遊関連書籍:明治裏面史〈上巻〉

 福田英子関連書籍:福田英子―婦人解放運動の先駆者 (1959年) (岩波新書)

 

※今回は一記事で終わり。